田圃の畦道を歩くと、草の伸びた里山の作業道を歩くと、そして登山者の少ない樹林の山道を行くと、「ちっ、ちっ」と舌打ちしながら後からついてくる奴がいます。
振り向くと、誰もいない。
また歩き出すと「ちっ、ちっ」。サッと振り向くと……、いたいた!見つけましたよ。アオジ [Emberiza spodocephala] です。
少し先に行って振り向くと、また同じ距離にいます。ずーっと同じ間隔で付いてきてるようです。
尾行られている。間違いない。
ちなみに…
「アオジの舌打ち」とは、葛西臨海公園鳥類園チーフ、Nさんの命名です。
「アオジの尾行」とは、不肖私の命名ですw。
アオジに限ったわけではありませんが、特にアオジは尾行が好きなようです。
しかも、舌打ちするので、ちょっと苛つくんですよ。
人間が通ると、落葉の下や草の根元に隠れていた虫が姿を現します。それを彼らはよく知っています。
鹿角地方ではアオジは夏に見られます。でも、東京の人はアオジを冬鳥だと思っているかもしれません。
ですから、正確には夏鳥でも冬鳥でもありません。
本州のあまり広くない範囲で季節移動をする漂鳥ということになります。
夏鳥がやってくるゴールデンウィークの頃、そろそろ庭の雑草取りを始めると、傍でチッチッが始まります。やはり、付かず離れずの距離にいます。
程なく、木の上で囀りも始まってきます。ホオジロ属 [Emberiza] の例に漏れず美声です。
時々ゆったりとしたフレーズが入るテンポの穏やかな鳴き声です。
一度、庭のカエデの木に巣作りを始めたことがありましたが、ハシボソガラスに邪魔をされて中断してしまいました。
分布域は広く、市街地の近くから山のブナ林上部までいろんな場所で繁殖するようです。
八幡平大沼では、ミズバショウが咲き遊歩道の木道が見え始めた頃から気配を感じ始めますが、森が深いので姿はあまり見易いとは言えません。
個体数ももう少し標高の低い場所の方が多いようです。
繁殖期は、番で分散するのであまり群れで見ることはありません。
そして秋、木々の葉が色付き始めた頃、尾去沢の水晶山等、ススキや灌木の山の斜面を歩いたとき、足元から大きな群れが飛び立ちました。若鳥の混じったアオジの群れでした。
群れで見るのはこの時期だけ。当年生まれの子供たちを連れて暖地へ移動する準備なのでしょう。
越冬地ではほとんど地面や低い灌木の中を生活の場にしているアオジですが、東京で見ていたとき、11月の到着直後の頃だけはケヤキやクスノキの高い枝を飛び回っていたので意外な感じがしました。
それが、繁殖地では明るい開けた場所で朗々と囀っているのを見て、少し謎が解けた気がしました。
それはまだ夏の名残だったのですね。
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