梅雨の合間を縫って、鹿角市内の森林公園にでかけました。小学生の時はよく遠足の目的地になった、甘蕗という場所です。
スギの林の中で動いている小鳥の小群が見えるのですが……なんでしょう?
まず薮蚊が寄ってきます。そして、クロメマトイが目玉に飛び込んできます。もう、鬱陶しいこと。
最初に見えた鳥はアオジ [Emberiza spodocephala] のようでした。でも、ちらほらクロジ [Emberiza variabilis] も見えます。クロジの雌とアオジは区別が難儀です。尾羽根を広げるまで確信できません。さらに、アオジよりちょっと細身で黄色味の強い鳥も現れました。もしかしてノジコ [Emberiza sulphurata] かもしれない?
ノジコとアオジもこれまた紛らわしいのです。
ホオジロ属 [Emberiza] はかなり大きなグループです。そして似たような鳥が多くて観察者泣かせでもあります。
ノジコは特別に珍しいという程ではないのですが、見る機会はあまり多くありません。しっかり確認したいのですが。
スコープを覗こうとすると、クロメマトイが目玉に…。
カメラの準備を始めると手の甲で薮蚊が今まさに刺そうとして…。
もう……、勘弁してくれー!
薮から飛び上がってきて小枝に停まります。そしてまた薮に隠れると今度は別の場所から現れます。
どうやら、アオジ、クロジ、ノジコの3種が交互に姿を現して来るという、嬉しいような、しかし悩ましい光景が繰り広げられました。地鳴きもそっくり、姿も似ている。出てきた瞬間に即座に判別なんかできません。
なんとか、スコープの視界に捕えると、あ”あ”あ”…クロメマトイと薮蚊の邪魔が……。
撮った写真も、あとで見るとどれだか分からないものが多数あって、また悩みました。
ノジコは、北日本だけで繁殖する夏鳥です。一部は西日本で越冬し、多くは台湾やフィリピンなど極東南部で越冬します。
世界的にも狭い地域の鳥ですが、日本国内でもどこでも見られるというわけではないようです。
意外にも地味な存在で、都会のバードウォッチャーの中には見たことのない人も多いようです。
アオジは低地から高地まで広い範囲に分布しますが、ノジコの標高分布はわりと狭くて、主に標高250m〜600mぐらいの針葉樹と広葉樹の混じる山林でしょうか。
アオジとの外見の違いは、以下のような点があげられます。
• やや細身で小さいこと。
• 黄色味が強く見えること
• 細いアイリングはアオジより明瞭なこと
• 成鳥は腹の縦斑が全面ではなく、両脇のみであること
• 嘴が明るい鉛色、アオジは肉色または肉色と暗い鉛色のコンビ
種小名の sulphurata は硫黄の意味。やはり黄色の印象が強いことから来ていると思われます。 英名は?と調べると「Yellow Bunting=黄色いホオジロ(の仲間)」、そのまんまですね。 冬に黄色い小さな鳥といえばマヒワですが、夏ならノジコかもしれません。
漢字では野鵐子と書きます。鵐(訓読シトド)はホオジロの古語です。
野鳥の和名にシトドとついているものは100種以上ありますが、そのほとんどは海外種です。
明治の頃、1万種近い学名に和名を割り当てていくときに、万葉の時代に思いを寄せてシトドという言葉を選んだ方々のことを思い浮かべてしまいます。当時は博物学者と民俗学者、文学者の領域は大きくオーバーラップしていました。
囀りは、コロコロと珠を転がすような、とても美しい声です。
とてもよく通る声なので、小さな体に比して遠くまで聞こえます。声を頼りに探していくと、見つけたときにあまりに遠いので驚くことがあります。
ホオジロほど喧しくない。カシラダカほど忙しくない。アオジみたいに間延びしない。クロジほど単調ではない。
ホオジロ属中最高の唄声と評する人が多いようです。
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