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アスピーテラインの喧噪を避けて荒れた林道に入っていきます。
雪解け直後の林道は路肩が緩んでいて危険です。無理せずに車はさっさと降りて歩き始めると、キクザキイチリンソウやカタクリ、ミヤマエンレイソウ。
もう、越冬から醒めたキベリタテハ [Nymphalis antiopa] が飛んでいます。ビロードのような美しい羽の蝶を目で追っていくと何か黒い物の上に止まり……って、えっ!この黒い物体!ツキノワグマの糞じゃないですか。
そんな季節、ブナの芽吹きが始まった森の中から綺麗な複雑な囀りが聞こえてきました。
双眼鏡で声の主を探していくと、いました。やっぱりコサメビタキ [Muscicapa dauurica] でした。
どうも、この囀りは苦手です。覚えられなくていつも悩みます。
複雑な節回しで美しいのですが、これといったインパクトがないんですよね。
一年経って再び春が来た頃には忘れてしまう……ごめんなさい。
だいたい4月末から5月始め頃、鹿角市花輪の我が家の傍の谷戸に行くと、本年初見で出会うことになります。
それから、湯瀬渓谷など、2〜3週後に八幡平3〜5合目付近と上がっていきます。
最初はひっそりと目立たないのですが、ブナやミズナラの広葉樹林に一斉に夏鳥の囀りが始まる頃はコサメビタキも混じって、よく目に、耳にします。
日本で見られるサメビタキ属 [Muscicapa] は3種。コサメビタキとサメビタキ [Muscicapa sibirica] が夏鳥、エゾビタキ [Muscicapa griseisticta] が旅鳥です。なぜか「エゾ」ビタキと名付けられているので、北海道や東北で繁殖すると思っている人がいますが、エゾビタキは東南アジアから西日本や中部・関東地方を経由して大陸北部へ渡っていくので、北日本の内陸ではあまり見られません。
鹿角ではサメビタキ属の代表はコサメビタキです。
ほぼ雌雄同色で、雄雌の羽衣の違いはほとんどありません。
そして、キビタキ [Ficedula narcissina] の雌によく似ています。細部を見れば見るほど区別がしにくくなるのが、困ります。
じつは、鳥見を始めた頃、私は、キビタキ雌とコサメビタキの見分けにまったく自信がありませんでした。たしかに、目の前の白斑とか識別点はいろいろありますが、そんな部分がいつもはっきり見えるわけじゃないし。
明らかにコサメビタキと分かる個体もいます。でもキビタキのようにも見えコサメビタキのようにも見え……というのによく出くわして悩み狂うのです。で、悩んだ結果、どうもキビタキ雌らしい、という結論に。
ここで、はたと気がつきました。そうです、悩むようなのは全部キビタキなんです。
コサメビタキは、見た瞬間に「まさにコサメだあ!」と直感で分かるのです。
以前、チュウサギとダイサギの見分け方で迷った時のことを思い出しました。チュウサギは見た瞬間に全体のバランスでチュウサギと分かる。迷うようなのはダイサギで間違いない。
コサメビタキも同じ要領で識別できるじゃないですか?実にアンバランスに大きな頭!大きな目玉!持て余すように長い第1風切!それがコサメです。考えすぎて細部を見ちゃいけない。
そのツボが分かってから、やっと迷わなくなりました。
地味な色ですが、大きな頭とクリクリお目々が不思議と愛らしいコサメです。
ヒタキの特徴で、短い足で枝に縦に停まります。そして。飛び出してまた同じ枝に戻る習性がありますから、一度見つけたらゆっくり楽しませてくれる嬉しい鳥です。
written by © 2014,OOSATO,Kazzrou : kazz_atmark_kk.iij4u.or.jp
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