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4. コガラ [Parus montanus]

コガラ

早春の森に澄んださえずり

  早春の八幡平大沼のほとりをスノーシューで歩いていきます。

  休日だとスキー場のラウドスピーカーから流れてくる音楽が五月蝿いので、平日がいいです。
  まだ沼は全部雪の下。雪が音を吸い込んで、沼の周囲はまったく静かです。足を止めると、時々オオシラビソの枝から雪の落ちる音、木の幹の軋む音。雪の下を微かに水の流れる音。
  そんな中、ツーヒーツー、ツーヒーツーと伸びやかなコガラ [Parus montanus] の囀りが聞こえてきました。
  カタカナで書くとエゾムシクイ [Phylloscopus borealoides] と同じになってしまいますが、エゾムシクイは金属的な固く鋭い音、コガラは柔らかで澄んだ音で、一度聞くと間違えることはありません。エゾムシクイが現代風の金属ピッコロなら、コガラはバロック楽器の木製ソプラノリコーダーを思わせます。

  単純だけど美しく、いつまでも聞いていたくなる歌声です。
  好きな囀りの鳥名をいくつか挙げよ、と言われたら、私はコガラをベスト3に入れたいです。

  大きさは、シジュウカラ、ヤマガラより小さく、ヒガラより大きいです。
  シジュウカラ属 [Parus] の標高分布は、一般的に標高の低い方から、シジュウカラ、ヤマガラ、ヒガラ、コガラの順で、コガラは一番標高の高いところに棲むとされています。とは言っても、ほとんど重なり合っていて、花輪市街地に近い我が家の庭にも冬には4種ともやってきますし、八幡平大沼の周囲でもやはり4種見ることはできます。

  でも、真冬には大沼周辺でも一番多く見かける鳥ですし、囀りの季節には低地には少なくなるので、やっぱり山に登って楽しむ鳥ですね。
  そうです、種小名も montanus ですから。

  針葉樹を好むヒガラと対照的に、コガラは広葉樹を好むようです。
  冬に庭の餌台にヒマワリの種を置いておくとせっせと食べに来るのはシジュウカラとヤマガラで、ヒガラとコガラは餌台には来ません。ヒガラは松の木で松ぼっくりをつついています。
  そして、コガラはカエデの実やウツギの実などを食べています。

  カラ類の多くは樹洞に巣を作ります。多くはアカゲラなどの作った洞を利用します。
  この地のカラ類の多さは、キツツキの多さとも関連しています。
  コガラも基本的に樹洞借用型でキツツキなどの穴を利用しますが、自分で穴を開けることもあるのです。
  少なくとも、完全新築は無理な場合でもリフォーム程度はやっているようです。
  この小さな嘴で意外に力強い大工さんです。

  ボサボサ寝癖頭のヒガラとは違い、コガラはポマードで固めたオールバック?それともビロード生地のベレー帽をかぶったように見えます。
  なかなかお洒落です。

  春のブナ林では大木の梢付近にいることが多く、見上げてばかりいると首が疲れます。
  そんなときは、雪の上に仰向けに寝転がってしまいましょう。忙しく飛び回るコガラの姿と、美しい囀りを堪能できますよ。

[ print ] [ full width ] revision 1.4   2014/04/16 (2014/03/03初稿)

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