[ クロツグミ ←prev ] [ top↑目次↑ ] [ next→ ヒガラ ]

2. コムクドリ [Sturnus philippensis]

コムクドリ

慌だしい武闘派悪ガキ

  赤塚不二夫さんの描く天才バカボンの頬っぺには蚊取り線香みたいな渦巻き模様が描かれているのは皆さん良くご存じでしょう。
  えっ?それがどうしたって?
  とりのなんこさんの野鳥を題材にしたマンガ「とりぱん」に登場するコムクドリ [Sturnus philippensis] の頬っぺも同様の渦巻き模様なんですよ。
  バカボンへのオマージュでしょうか。それがコムクドリのイメージにあまりにピッタリなので、私は笑いこけてしまいました。

  名前の通り、ムクドリ科 [Sturnidae] の鳥です。でもムクドリは留鳥ですが、これは渡り鳥で、フィリピンあたりの東南アジアで越冬し、日本には東北地方や北海道に繁殖のためにやってきます。
  種小名の philippensis はもちろんフィリピンに由来しています。体格はムクドリより一回り小さく、いかにも南方系らしいトロピカルな(?)色合いの鳥です。
  雄なんてアロハシャツ着てるだろ!

  鹿角地方では、住宅地でも里山や田園でも普通によく見られる鳥ですが、全国的には地域に偏りがあるらしくて居ない地域には全然居ません。
  沢山見られるよというと、他の地方の人からは羨ましがられることがあります。

  鹿角にはだいたい5月初めにやってきて、6月末には居なくなります。2ヶ月足らずで子育て完了?いやいや、じつは5月中は殆ど喧嘩ばかりしているんですよ。こいつ等ったら。
  庭の木に、コムク用サイズの巣箱も用意しているのですが、最初は入居中のシジュウカラの巣箱にしきりにちょっかいを出します。小さすぎて使えないのにね。可哀相にシジュウカラはパニックして大騒ぎです。
  次に、いよいよコムク用の巣箱を巡って、複数のペアの争奪戦が始まります。
  その激しさは、取っ組み合いの喧嘩です。足で蹴り鋭い嘴で突き、同種の生物は激しい喧嘩はしないものだと思っていましたが、こいつ等の喧嘩は凄まじいです。ともかく、その時期の我が家の庭は喧騒に包まれます。

  そして、やっと巣箱を確保し巣材を運び始めるのは既に5月末も近い時期になります。巣材は枯葉を拾い集めるだけで、案外粗末です。巣立ち後に開けてみたら、マツの枯葉を円形に積み上げていました。
  スギゴケやシラガゴケのクッションを何層も積み上げて丁寧な丁寧な産座を作るシジュウカラに比べたら、実にイージーです。

  抱卵は雌雄交互に行っているようです。
  それまでペアで揃って餌台に来ていたのが交互に現れるようになって、抱卵が始まったことが分かります。その頃には天然の餌も豊富になって来ているので、餌台はそろそろ撤去します。
  孵化後の給餌も雌雄共同です。孵化も早くて10日前後、そして2週間ほどで巣立ちと、鳥の中でもかなり速い子育てが終わり、一瞬巣立ち雛の姿を見たと思うと、もう家族ごと慌だしく居なくなるのです。
  東京では、7月上旬には幼鳥の混じったコムクの群れを見ることができます。秋の渡りの早い鳥と思われています。時期的には符合していますね。

  雛に与える餌は、青虫などの昆虫の幼虫が多いようですが、春が遅く鱗翅目の幼虫の発生が遅い年にはアシナガバチの成虫を良く捕えて来ていました。ハチの成虫の場合はすぐに雛に与えず、近くの枝で餌が弱るのを待ってから巣に運んでいきます。雌の顔はアシナガバチの返り血で真っ赤になっていました。それなりに大変なようです。
  親鳥は、果物も大好物です。餌台にリンゴを置いておくと良く食べに来ます。ただ、リンゴの皮むきはあまり得意じゃなくて、丸ごとのリンゴを置くと皮むきの得意なヒヨドリが来るのを待っています。
  で、ヒヨドリが食べ始めると寄ってきて睨み合い。そして体格で勝るヒヨドリを追い払ってしまいます。
  気の毒なヒヨ君はコムクが食べ終わるまで、傍でじっと待っています。

  ある日、庭が騒がしいので出てみると、コムクドリの巣箱にアオダイショウが迫っていました。その時、巣を守ろうとコムクの親鳥と協力して戦ってくれていたのはヒヨドリなんですね。ヒヨ君、なんて良い奴なんだ。不思議な関係です。

  6月末あたり、群れを作ることがなかったコムクドリが、家の前の電線に数10羽並ぶと、渡りの準備です。程なくすっかり姿を消します。
  コムクドリの姿が消えて喧騒が去ると、皮投岳の上に大きな積乱雲が立ち上がっていました。鹿角に短い夏が来ます。

  大騒ぎして暴れ回って、あっと言う間に立ち去る、それがコムクドリ。

[ print ] [ full width ] revision 1.5   2014/04/16 (2014/03/03初稿)

written by © 2014,OOSATO,Kazzrou : kazz_atmark_kk.iij4u.or.jp

[ クロツグミ ←prev ] [ top↑目次↑ ] [ next→ ヒガラ ]

この HTML を検査する。 ( XHTML 1.0 Strict に従っています )
Another HTML Lint Gateway ( Mirrored by htmllint.oosato.org )